離婚と子供の問題
離婚が及ぼす子供への影響
離婚が及ぼす子供への影響(制度・心理)としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。
①片親(親権者または監護者)とだけ暮らすようになる
②母親が親権者だと姓が変わることがある
③扶養料の不払いがあると経済的に困窮する
④小・中・高校生だと転校もある
⑤心理的に多大な影響を与える
離婚にあたっては、上記のような子供への影響を十分に考慮しなければなりません。
まず、制度等についてご説明いたします。
離婚にあたっては、離婚と同時に必ず未成年者の親権者を指定しなければならず、親権者を指定しない協議離婚届は受理されません。したがって、離婚に双方が同意していたとしても、親権者が決まらない限りは離婚が成立することはありません。
そして親権者が決まれば、一般的には子供は親権者とだけ暮らし始めることになります。面接交渉が実行されていなければ、もう片方の親と会うことは出来なくなるかもしれません。
このとき、母親が親権者であった場合は、母方の姓に改める場合があり、子供にとっては自分の苗字が変わることになります。さらに、引越しが必要な場合は、現在通っている学校から転校する必要もあるでしょう。
また、母子家庭・父子家庭で生活していくにあたって、十分な養育費が確保できるかどうかは子供の成長にとって重要な要素となります。子供のことを考えるのであれば、離婚前に十分な見通しを立てる必要があるといえるでしょう。
最後に、離婚が子供に与える心理的な影響についてですが、これに関しては家庭によって良い面・悪い面の両面があると言えます。
悪い面
・両親の離婚に傷つく。場合によっては自分が原因であると考える子もいる。
・生活が一変するのでストレスを感じる。
・片親と会えなくなることや、引っ越す場合であれば知人・友人と会えなくなる寂しさを感じる。
良い面
・両親の不和を見なくて済むようになる
・安定した生活環境が手に入る(離婚前の生活が荒れていた場合)
・引き取った親が充実した生活を送る姿を見ることが出来る
離婚により子供に多大な負荷がかかることは確かですが、子供が精神的に安定して成長するためには家庭内の大人の関係が良好であることが心理学的には重要です。
離婚は短期的には子供に悪影響を及ぼすといわざるを得ませんが、夫婦間の関係が険悪になっている場合、離婚してしまった方が長期的には良いのかもしれません。離婚後に親が充実した生活を送っている姿を子供に見せる、ということが、子供の精神的安定につながり、成長していく上でよい影響を及ぼすことがあるからです。また、悪影響についても、よほど子供との関係性が悪くない限りは、別れた親との定期的な面会の場を設けてあげることで、離婚の影響は軽減されるでしょう。
自分と子供にとっての幸せを実現するために離婚を考えているのであれば、上記のような影響も考慮しなければなりません。そのためには、少しでもスムーズに離婚手続きを終わらせる必要があるといえるでしょう。まずは、法律の専門家に相談して見通しを立てることから始めましょう。
子供に関する権利
①親権
親権とは、未成年者の子供を保護、養育し、子供に財産がある場合、その財産を管理するなどして、子供を無事に大人に育てる義務のことを言います。
婚姻中は両親が共同して親権を行使している状態になりますが、離婚後は父母のどちらか一方が親権者となって親権を行使するように決められています。
親権は法律的には以下の二つに分けられます。
(1)身上監護権
→未成年の子供の身の回りの世話、しつけ、教育等の親としての権限。子供の姓を改める際のように法律行為の代理人になることも含まれます。
(2)財産管理権
遺産相続などによって子供が財産を所持した場合、この管理や売買など法律行為の代理人となる権利です。
親権は権利というよりはむしろ養育の義務といった側面が強いといえます。
親権がどちらの親に所属するかは、離婚成立前に必ず決定しなければなりません。なお、子供が既に成人している場合、未成年で結婚している場合は、親権に関する取り決めを行う必要はありません。
協議離婚を目指していても親権の所属が決まらない場合、離婚は成立しません。この場合、家庭裁判所に離婚調停や審判を申し立て、そこで親権者を決定することとなります。
裁判所で親権者を決定するときの判断基準としては、
(i) 10歳くらいまでは、母親(不適切な者でない限り)
(ii) 子供の意思能力により判断できれば、子供の意思を尊重する
(iii) 双方の状況比較よる決定(家事・育児に費やせる時間、収入、職業など)
が挙げられます。
同様に、親権者が子供を養育する環境が悪くなった場合など、特別な事情があれば家庭裁判所に親権者変更の調停や審判を申し立てることで親権者を変更することが出来ます。
親権者が死亡してしまった場合、親権者(後見人)を変更する必要があります。
まず、親権者が残した遺言による指定が尊重され、指定が特になければ親族の請求によって家庭裁判所が後見人を指定します。
なお、親権と破産の間に関係はなく、親権者が破産をすることによって親権が移るということは特殊な状況を除いてはありません。また、破産している者が親権者になれない、ということもありません。
②監護権
監護権は前出の親権のうち「身上監護権」のことを指します。
離婚の際には親権者のほかに、「身上監護権のみ」を行使できる監護者を定められます。例えば、父親が親権者となることには同意したものの、時間的に子供の養育ができないということになれば、母親が監護者として子供を引き取ることができるのです。
③面接交渉権
面接交渉権とは、離婚後、一緒に暮らしていない方の親が定期的な面会等で子供と触れ合う機会をつくる権利です。原則として、離婚前に夫婦で話し合って面接交渉権について取り決めを作っておく必要があります。
その際、以下のような項目を予め決めておいた方が良いでしょう。
・面会回数(頻度)
年に何回会えるのか、もしくは毎月会えるのか、などの面会回数を決めておきます。
具体的な日程・場所などは随時決めていくことにして、先に頻度を決定しておくことが一般的です。
・子供の受け渡しの方法
例えば、面会中は同居している親が付き添うことを定めたり、一定の年齢に達したら子供だけで面会できることを定めたりします。他にも、子供の行事(運動会など)や、面会時の宿泊、手紙や電話でのやり取りについても取り決めを作っておくのがよいでしょう。
一方が面接交渉権を認めたがらない場合もありますが、その場合は家庭裁判所に面接交渉の調停の申し立てを行うことができます。面接交渉権は親権のように法律で定められた権利ではありませんが、子供の監護に関する処分に含まれるとして、申し立てが認められています。申し立てを行うと、裁判所による調査の結果、子供の福祉に反しない、と判断すれば面接交渉権が認められることとなります。
上記のように、子供に関する権利を理解し、手続きをしていくためには複雑な知識と煩雑な手続きが必要になってきます。専門家に相談することで少しでも負担を軽減するのがよいでしょう。
子供のことが話し合いで決まらない場合
協議離婚を目指していたが子供についての話し合いがまとまらない、という場合には調停に移行することになります。特に、親権に関しては親権者が定まらない限り離婚が成立することはありません。
正しい法律知識をもってより優位に調停を進めたい方は、まず専門家に相談することをお勧めします。
事情がある場合でも出来る限りどちらかの親が親権者となり、必要に応じて適切な監護者を指名することが子供の福祉には適っているといえるでしょう。
※「子供に関する権利」の項を参照。
また、残念ながら子供をお互いにおしつけあって、引き取りたがらない、というケースもあります。
原則的にはどちらかの親が親権者となりますので、最終的には裁判所で親権者が決定されることとなりますが、
・長期間海外に滞在せざるを得ない
・刑に服する
・重病である
というような「やむを得ない事由があるとき」には親権者を辞任することが出来ます。この場合は、許可の審判書の謄本を添えて戸籍係に親権辞任の届出を提出する必要があります。
また、裁判所の決定によってやむを得ず親権者に指名された親が十分な監護・養育を果たさないことにより、子供の福祉に問題が発生すると判断した場合は、子供の親族、検察官、児童相談所の所長など第三者が親権喪失の申し立てを行うことができます。
申し立てが受理されれば子供の親権者はいなくなり、子供の後見人選任の申し立てが出来るようになります。そして親に代わって監護人となり、身の回りの世話や教育を行うことになります。
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